実録!関東昭和軍(田中誠/週刊コミックモーニング)

ギャンブルレーサーで有名な(と言っても私は未読だけど)田中誠高校野球の暗部に大胆に挑戦した(?)作品……はいいんですが……これって……

ええっと。ときは平成、ところは武蔵国西東京ゆとり教育も伸び伸び野球も何のその、戦前の軍隊もかくやという理不尽なシゴキに耐え、ただひたすら甲子園を目指す、私立・関東昭和高校野球部。通称「関昭」と呼ばれるこのチーム、総勢45名が合宿所「斗魂寮」で暮らし、学校に行く以外は(学校には一応行っている。寝ていることが多いらしいけど)外出どころか親兄弟との面会も許されず野球に明け暮れる毎日。

上級生は鬼軍そ…じゃなかった監督・尾宮貫一(この名前……(汗))の軍隊式特訓に耐え、1年生は上級生のヤキ入れに耐え、メンバー入りを目指して足を引っ張り切磋琢磨し合いますが、甲子園は近いようで遠い。そもそも関東昭和の部員の殆どは怪我や実力不足で一流チームには行けなかった選手だし、突出した実力を持つ数名の選手も不祥事で推薦をフイにしたり、素行が(顔もだけど)凶悪すぎたり物覚えが悪すぎて他校からは声がかからなかったりという連中。甲子園出場経験こそあるものの、強豪チームの「端くれ」に過ぎないことは自他共に認めるところ、横学や日学大三といった超一流のチームからは関昭ごときと侮られ、名門・早稲田実践に競り勝っておきながら格下のチームにはコールド負け、スタンドの観客から罵声を浴びるその姿は、正直胸が痛い。

暴力あり酒あり裏工作あり密告あり(そういや不思議と喫煙はない)、関昭も関昭なら相手も相手の甲子園狂騒曲。つまり風刺漫画なわけだから、笑って読むのが正しい読み方なんだろうとは思うのだけど、私はというと、爆笑しながらも、心の片隅でムッとしたり涙したりしたあげく、やがて、揃いも揃って目つきの悪いニキビ面の坊主頭集団はもちろん、酒と博打と女に目がなく、上にはペコペコ、下には横暴なカントクまでを愛しく思ってしまってる自分に気付いて愕然とするのです。

だって、どんなにワルくても欲にまみれても、馬鹿と言われようが一流半と揶揄されようが、野球しかない、野球にすべてを賭けてるんですもの、こいつら。「なんで俺が高校来て野球やっちゃいけねえんだよ!ガキの頃から人を殴る事と同じくれぇ野球は好きなんだよ!」(山楝蛇千里・1年センター)、「俺たちはみんな己の人生賭けて野球やってんだぞ。ここは野球にかんしちゃ上も下もねえガチンコの世界なんだ!」(三野文太・2年キャッチャー)には痺れました。山楝蛇が「関昭入ってからまだ一滴もやってなかった」(←入学してから我慢してたのか、はたまた忘れてたのか。2ヶ月かそこらだけど…)というくだりもカワイイし、甲子園を賭けた日学大三との練習試合で三野がスクイズ阻止したときはかっこいー♪と快哉を叫んだり。ひょっとしてまさか私、この二人のファンなのか!?語り手役の桶谷五朗(1年サード)のフツーぶりも可愛いけど。

ガンバレ関昭!甲子園行こうな!